tealtriangle『夢見石』の冒険:#02 <<Previous Next>>

tealdice [shortland 『夢見石』第2回] tealdice プロローグ「時の狭間に…」 tealdice

事件の真犯人であるジールのドッペルゲンガーを倒し、
その報告に、盗賊のコリー、ハリーが旅立った後…
主人の居なくなった『森の女神』亭で貴方達は、戦いの疲れをいやしていた。
その晩…
奇妙な『夢』を見た。

見知らぬ男女と共に旅をする貴方達4人。
見知らぬ…いや、貴方達は彼女らを知っている。
女性の方は、姉のラグ。
真っ赤な髪に前髪の一部に黒いメッシュを入れ、明るい青い瞳を持った、
男口調で話す、無口な女性。
男性の方は、弟のダグ。
濃いブロンドのボブカットの髪型に、明るい青い瞳を持った、
よく話す、ちょっと気弱な、男性。
姉は、盗賊、弟は魔術師の様であるが、なぜか二人とも魔術師呪文を使用できたり、ラストン人しか使用できない小魔術(キャントリップ)をごく普通に使ったりする。さらに驚くべき事に彼女らは、護衛として、水晶や木で出来たゴーレムを連れている!
しかし、それらがごく普通の常識としてまかり通っていた。

それでも『夢』の中の貴方達は、なぜかごく自然に振る舞っていた。
貴方達は、彼女らの願いを聞き入れ、彼女らの母であり、村の領主である、セフィロム氏を助けるために、深い森の中、道無き道切り開き、彼女らと共に進んでいた。
彼女らとの旅が続く…

そこで、目が覚めた。
身体に疲労が残るような気がした。
眠っていても、冒険を続けているような…
しかしそれは『夢』だった。
見知らぬ男女も居ないし、森の中でもない。ましてやゴーレムなど居もしない。
見慣れた『森の女神』亭の大部屋、見慣れた仲間。
よく知っている、常識。
なぜかホッとした。
しかし、この『夢』は、始まりでしかなかった。
ましてや、貴方達が眠っている間に、
『夢見石』から発せられた緑色の光に貴方達が包まれていた、
などと言うことは、誰も知らないことであった。

そしてその朝、貴方達はセロ村を旅立った。
『夢見石』をもって、危険な恵みの森の中をフィルシムに向けて。

tealdice [shortland 『夢見石』第2回] tealdice あらすじ tealdice

1.恵みの森

 ハリーとコリーの二人は、サラ、リッキィ、ラグナー、ルギアの4人をセロ村に残し、先んじてフィルシムのギルドへ報告に向かった。
 『夢見石』の処遇について、サラは残った仲間たちに「神殿で封じてもらいたい」と相談した。レビーの持っていた本からわかったように、この「石」はとてつもなく強力で、だれの手に渡って悪用されないとも限らないからだ。仲間たちはどちらかと言えば冒険者ギルドに届けて、任務をまっとうしたいようだったが、とりあえずフィルシムまで行こう、という話に落ち着いた。「石」と「指輪」、そして本はサラが持つことにした。
 セロ村を発った日の夜、4人は先にセロ村を出ていった駆け出しの冒険者たち、アグニのパーティの野営跡を見つけた。彼らは狼かなにかに襲われたようだった。また、現場には何やら白い粉が落ちており、ルギアは「何かのモンスターにあったと思うんだが、思い出せない」と頭を悩ましたが、結局思い出せなかった。
 その夜、ウィッチグロウが現れた。彼らと戦い、彼らの罠(落とし穴)にもうまいこと嵌らずに、相手をやっつけた。あとで落とし穴を確認すると、アグニの死体らしきものが底のほうにあった。ラグナーとサラは、上から土をかぶせてやった。
 その後、やはり夜営中に、ラグナーとサラが見張っていると、アグニの亡霊が現れた。害意を持っているわけではなく、単に自分が死んだことを知らず、仲間を探しているのだった。ラグナーとサラはアグニの亡霊を先ほどの落とし穴のところへ案内し、穴を掘り起こして彼の死体を見せてやった。アグニは「俺、死んでたんだ。ごめんな、皆」といって昇天していった

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2.夢の世界

 夜明け頃、「石」から緑の光が溢れ、見張りのため起きていた者も夢の世界へいざなわれた。
 目覚めると、今までと違う場所にいた。どうやら『夢見石』の迷宮の入り口あたりのようだ。
 不審に思っているところへ、若い男女が現れた。その二人の顔を見て、4人は「知っている」と思った。だが現実に知っていたわけではなかった。夢の中に登場した人物そっくりだったのだ。
 彼らはルギアに話し掛けた。他の人間は、まるで人間ではないというような風情で。
 彼ら---ラグとダグと名乗った二人の姉弟は、もし『夢見石』を持っているなら自分たちに渡してほしいと、かなり高飛車な態度で申し入れてきた。『夢見石』の恐ろしさを小なりと知っている一同には、それは応じられない相談だ。だが、とりあえずは、この夢の世界で、彼らの病んだ母親を診にいくため、それからこの危ない森から抜け出るために、ハッシマー村まで同行することになった。
 ラグやダグと行動をともにするうちに、どうやらこの場がサーランド王国の時代に属しているらしいとわかってきた。つまり、魔術師全盛で、メイジ魔法を使えない者は一人前の人間として扱われない時代だ。サラのように神聖魔法を使える人間は「能力奴隷」、リッキィやラグナーのように魔法のマの字も使えない戦士はただの「奴隷」として扱われていた。
 二人の態度にも、それが如実に表れていた。仲間を同格に扱うルギアを彼らは不審げに見、奴隷に対してなぜそんな妙な扱いをするのか尋ねてきた。ルギアは「彼らのことは対等に扱っているのだ」と答えた。ラグとダグは、ルギアのことをますます変な目つきで眺めたが、「所詮は魔晶石も持っていない格下の、変わり者の魔術師」と判断を下したようだった。

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3.不測の事態

 朝、起きてみると、現実の、現在時制の「恵みの森」にいた。しかし、「ただの夢」で片付けるわけにはいかないようだった。4人全員が同じ体験をしただけでなく、本物の「疲労」が残っていたからだ。このまま進むのは危険と判断し、一同は一旦セロ村に戻った。そこで強壮剤を仕入れると、ふたたびフィルシムへ向けて出発した。
 その途中、毒蛇の群れに襲われた。運悪くリッキィとルギアが蛇毒を受け、瀕死の状態になった。残る二人は決断を迫られた。今すぐに『夢見石』を使ってリッキィとルギアを助けるか、それともこのまま手をこまねいて二人が死ぬのを見届けるか。
 ラグナーは「使う」と断言した。サラは迷っていたが、そんな危ないものをラグナーに使わせるくらいなら自分が、と、イヴィルへの反感を押さえつけて「指輪」をはめ、「石」を二人に向けて使った。リッキィとルギアは毒の呪縛から解放され、すぐに意識を取り戻した。リッキィは影響されなかったが、ルギアは「石」を欲しいと思い出したようだった。そしてサラは「石」の魅力に抗えなくなっていた。
 いつものように夢の世界での道行を終え、現実世界で起床した翌朝、リッキィとラグナーは、サラが、マクレガーのように「石」を胸に下げようとするのを見て仰天した。リッキィが諭しても無駄だった。これもレビーの本に書かれていたことだが、『夢見石』の特性として、その所有者は必ず「石」を見せびらかしたがるようになる。サラが「石」にとり憑かれていることは日を見るより明らかだった。
 ラグナーはまた、ルギアの「石」に向ける視線が以前と違っていることにも気づいた。彼はリッキィに「実は『夢見石』を使って二人の生命をつないだ」ことを白状し、サラやルギアの異変はそのせいだろうと結論した。リッキィは力ずくでサラから「石」を取り上げ、「危ないから私が持つ」と宣言した。「石」は「指輪」とともに皮の小袋に入れ、サラから見えるようにベルトにさげた。全く目の届かない場所へ置けば、逆にサラが無理やり奪おうとするだろうと判断したからだった。そしてその判断は正しかった。

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4.セフィロム

 ある夜---ないしある朝、一同が目覚めると、夢の世界が現実になっていた。なぜかはわからないが、ラグやダグのいる過去の世界から、300年後の自分たちの世界に帰れなくなったことを実感したのだ。
 「目覚めても帰れない…」そう落ち込む一同を、ダグは容赦無く「急いでくれ」と鞭打った。ダグのやりようは何から何まで不親切だった。仮令(たとえ)それが母親を案じての行為であれ…。一方のラグは、時おりダグを諌めたりするもののほとんど無言で、とらえどころがなかった。一同は---とりわけリッキィとラグナーは降り積もる不満を胸に、黙々と進んだ。
 あと少しでハッシマー村だというあたりで、昆虫の姿をした人間のようなものに一行は襲われた。それはハイブと呼ばれるモンスターの類だが、元はハッシマー村の住民らしかった。ハイブを倒し、一行はさらに急いだ(急がされた)。ラグもダグも「母親が回復すればハイブを倒せる」とばかり言った。
 ついにハッシマー村に着いた。正確には、ハッシマー村の生き残りが身を寄せ合って暮らしている、樹上の住居に到着した。
 ラグとダグは「石」をこちらに渡すか、それが無理なら母の治療にその能力を使ってほしいと、再び申し入れてきた。彼らの母であるセフィロム=ハッシマーは、先ほど見たハイブに寄生され、このままではハイブそのものになってしまうと言う。サラは「石」を使うことを決めた。が、リッキィとラグナーは、今までの憤懣を消化できなければ嫌だと言った。「お願いします」。その一言さえあれば、使っても良いという条件を、彼らはルギアから伝えさせた。
 ラグやダグにしてみれば奴隷でしかないような人間に「お願いします」と頭を下げるなどとは、屈辱的なことだった。だが、ラグはあえて頭を下げた。それを見ていたダグは部屋へ駆けこみ、一人で泣いた。
 ともあれ、条件は満たされた。一同はだれが「石」を使うかという相談をしたが、サラが「自分がやる」と言って譲らないので彼女に任せることになった。サラは、ルギアとともに(彼の奴隷として)セフィロムの寝室へ入り、再び「石」を使ってセフィロムを治した。その治療のせいで、サラはますます「石」の魔力に冒されることになった。さらに、感じた。
(セフィロムは「石」を欲して私を殺そうとしている…!)
 治療を受けたそのときに、セフィロムも「石」の魅力にすっかりとり憑かれてしまったのだ。

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5.逃避

 部屋から出てすぐ、サラはリッキィを家の外へ連れ出し、ここにいてはセフィロムに殺されると告げた。リッキィはラグナーやルギアに「すぐ出よう」と促し、ルギアは宴の用意をしているラグやダグに「ハイブコアの様子を見てくる」と言い訳して暇を告げた。ラグもダグも心象を害したようだったが、そんなことに構ってはいられなかった。
 一同は足早に森へ向かった。他に行くところはなかった。あの「迷宮」の他に、この時代で知りうる場所はどこにもなかった。そして元の世界へ帰るためには、あの「迷宮」に入る以外に手立てを考えることができなかった。
 その晩、野営の準備をしている最中、一同はハイブコアのある方向の空が真っ赤に染まるのを見た。大きな爆発が起こったようだった。セフィロムの仕業ではないはずだ。彼女はまだ十分に動けるほど快復してはいない。そして瞬時に思い出した。「石」の力で生み出されたドッペルゲンガーは、オリジナルの意思を果たそうとするのではなかったか。冷や汗が流れた。セフィロムだけでなく、これからはセフィロムのドッペルゲンガーにも追われなければならない。その追っ手を振り切って、なんとしてでも「迷宮」へたどり着かなければ……
 暗い夜が更けていった。悪夢はまだ終わらない。

tealdice [shortland 『夢見石』第2回] tealdice サラの第二の手紙 tealdice

 神の忠実なる僕、神官サラよりパシエンス修道院の皆様へ。
 私たちの母なるエオリスより、恵みと平安とが皆様のうえにありますように。

 院長さま、兄弟たち、私は今とても遠いところにいます。とても遠い…もはや帰るあてもなく、この手紙を託すあてもないくらい遠いところです。これが夢なのか現実なのか、未だにわかりません。

 先だってとある「石」のことを書き送りましたが、その「石」の力により、私たちはどうやら過去の世界に飛ばされてしまったようなのです。最初はただの夢だと思っていました。目覚めるときはそちらの…つまり、あなた方のいらっしゃる世界で目覚めていたからです。ですが、ある日を境に、そちらの世界で目覚めることができなくなってしまいました。

 あるいは、そちらの世界には今もって目覚めず、ひたすら眠り続ける私たちがいるのかもしれません。そうであるにしても、こちらの世界…この過去の夢は、今の私にとってあまりにリアルです。痛みも恐怖も嘆きも、感じられる何もかもがリアルなのです。

 時代的にはサーランド時代のようです。私はここでは「能力奴隷」と呼ばれています。ここで、ある人を助けるために「石」を使いました。いえ、その人を助ける以前に、実は仲間を助けたくて「石」を使ってしまいました。使ってみて、「石」が悪いものだとは私には思えませんでした。ただ、ひとの損なわれたる部分は神の力によって癒されなければならないという信念が、崩れ去ってしまったようで私は恐ろしい。

 けれどどうしても使わずにはいられなかった。リッキィとルギアがあのまま死ぬなんて、私にはどうしても耐えられなかった。これは私の弱さゆえなのでしょうか。悔い改めるべき弱さなのでしょうか。

 私は知っています、病や死の淵から力によって掬い上げることは、必ずしも救いにはならないのだということを。それは院長様、あなたから教わったのです。そしてまた、今までの経験の最中に少なからず実感もしたことでした。けれど、実に目の前で親しき友が死なんとしているときに、救いも何も関係なく、今この手にある「力」で彼らを助けようとすることは、間違っているのでしょうか。私の修練が足りなくて、そのように振舞ってしまうのでしょうか。

 おお、艱難は喜ぶべきかな、艱難は忍耐を生み、忍耐は練達を生み、練達は希望を生むもの。来るべき世への希望を生み出すために、私たちは艱難を喜ぶべきなのです。それはわかっています。わかってはいますが……。

 「石」はすばらしい力を秘めています。仮令(たとえ)間違った道をとってしまったのだとしても、私は「石」に感謝せずにはおれません。この力で誰もかも救うことができれば、どんなにすばらしいでしょう。ですが、私は「石」を封印すると決めたのです。心残りではありますが、それが神の僕の役割だと判じたのです。ああ、この「石」をずっと手許においておけたなら…。残り少ない日々となるか、無限の日々となるかはわかりませんが、封印するまでの間もこの手に持っていたいと願います。ですが、リッキィやラグナー(仲間の名前です)が酷く心配するので、今はリッキィに預けています。彼らを不要に心配させるのは本意ではありませんし、また、リッキィなら決して「石」を盗ったりしないでしょうから。

 これからこの「石」の封印されている迷宮へ向かいます。過去の「石」と現在の「石」を会わせることによって、もしかしたら元の世界へ戻れるかもしれないからです。とても儚い望みですが、私たちにはこの一縷の望みに賭けるしか道が残されていません。夢の世界に残れば、いずれ私は殺されるでしょう。それも「石」ゆえに。

 何やら支離滅裂になってしまいました。このような手紙をお送りすることを赦してください。私にもまだはっきりと事態がつかめていないのです。私にはもうわからないのです、何を為すべきかが。

 迷宮から無事に現在へ戻れたら、この手紙も破いて捨てましょう。けれど、万策尽きてどうしても戻れなかったとき……そのときにはもう一度「石」の力を行使しようと考えています。せめて仲間は、あの三人は元の世界に帰らせたい。「石」に願うだけで実現するかどうか、それも賭けでしかないのですが、何もしないよりはマシです。ただ、そのとき、私は「石」とともにこちらに残ります。そうすれば「石」はあなた方のおわす現在より行く末にわたって失われ、封印も必要なくなるでしょう。そのときは誰かにこの手紙を託すつもりです。

 この一連の出来事も、神が私に下された試練なのでしょう。そう思えば辛くはありません。ただ、もし帰ることが叶わなかったとき、心残りなのは兄弟たち、あなた方と修道院のことばかりです。結局、私は恩を受けるばかりで、それをお返しすることが少しもできませんでした。どうかお赦しください。

 そもそも修道院をこの手で持ち直させようなどとは、身のほど知らずな思い上がりだったのかもしれません。ですが神は自らを助くる者を助けてくださる、その言葉を心の支えに、私の振る舞いを過去も未来も神が赦してくださるよう祈ります。

 皆様に心からの愛と、祝福を。私のことはどうか忘れてください。

夢の地・恵みの森にて サラ

tealdice [shortland 『夢見石』第2回] tealdice プレイヤーのコメント tealdice

 あんなところで「石」を使うことになるなんて〜。マスターもびっくりの展開。そしてこれ以後、サラはセービングスローにまるで成功できなくなるのでした。あとは墜ちてゆくばかり。これも「石」の呪いか???

 後半はなんとなく殺伐としていました(笑)。ラグとダグのプレイヤーがうまくて、サーランド王国時代の人間の「魔術師以外は虫けら」的な態度が実に明々白々で(笑)。ルギアの飄々としたロールがせめてもの救いだったかな?

 ラグやダグとは結局語り合う時間がなく、全く分かり合えないまま物別れになってしまって残念……。治療後、セフィロムがセービングスローで「1」なんてとんでもないダイス目を出さなきゃあ、もーちょっとのんびりできたのに……そしてセフィロムの脅威は次回へ繰り越され、思わぬところでマスターのサドぶりが遺憾なく発揮されることになるのでした。ちゃんちゃん。


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