tealtriangle『夢見石』の冒険:#01 Next>>

tealdice [shortland 『夢見石』第1回] tealdice プロローグ tealdice

 人々の苦痛を取り除き、安らかなる夢と希望に満ちた未来を見せてくれる …
 そんな伝説を持った石があるという…
 その名も『夢・見・石』。
 その伝承が、今、現実となる。

 その『石』が、いつ、どこで、何のために作られたのか、全く判っていない。
 なぜならば、記録として全く残っていないからである。
 ただ、「肉体を救済する為に」、「希望に満ちあふれた世界を築く為に」このハート型をした七色の『石』は作られた、という伝承だけが残っている。
 『石』は、確かに誰かに作られた、そしてなぜか、歴史の表舞台から姿を消したのだ。
 しかし、それすらも遠い昔の話だった…

 その忘れ去られていた伝承を呼び覚ました男が…いや正確には男達が…いた。
 彼らは、ここフィルシムから北東に9日ばかり行った処にあるセロ村を中心に活動していた冒険者達であった。
 セロ村の周辺にはラストン統一王国時代に魔術師達が、研究のため作った隠し研究施設が多く残されており、その正確な数は不明である。また、今なお、手つかずの研究施設があると言われ、周辺の危険度と相まって腕に覚えのある冒険者には、格好のスポットとなっている。
 彼らもそんな冒険者達の1パーティだった。

 事の起こりは、彼らが手つかずの研究施設を発見したことであった。彼らはその研究所を攻略するのに、多大なる犠牲を払った。生きて帰ってきたのはわずかに一人。盗賊の『マクレガー』のみであった。
 彼が研究所で、手にしたのはたった1個の『石』のみ。しかしこの『石』が、伝承に出てくる七色に輝くハート型の『石』だった。彼は、調べた。そして遠い昔にこの『石』の発見者に50,000gpもの大金がかけられていることを、そしてこの報奨金は未だに取り消されていないことを知った。
 そして冒険者ギルドに依頼をしてきた、自分を守る護衛を付けてくれと。

 フィルシムの冒険者ギルドの一室。初めて顔を合わせた6人の男女が、ギルド内でも高位の、滅多に顔を合わせることのない、人物の前にいる。

サラ・パート
 貴方は、神殿からの紹介でこの場所に立っている。なぜ貴方が選ばれたのか、貴方には判らなかった。たかが地方の一弱小修道院の、レベル持ちとはいえその道では駆け出しの部類の貴方には。しかし話を聞くうちに、その報酬の大きさに驚き、その為に呼ばれたのだと判った。

「君達に集まってもらったのは、他でもない。彼『マクレガー』と彼の持つ『石』を無事、ここフィルシムまで連れて帰ってきてほしい。知っての通り、フィルシムとセロ村の往復の道中は怪物が多く現れる危険地帯だ。彼は、不幸にも冒険中に仲間を失ってしまった。この危険な道中を一人で帰るのは不可能に等しいのだ。どうかよろしく頼む。」
 依頼主である冒険者ギルドからの条件面の話は、こうであった。
 報酬は、一人1,000gp。だだし、これは『石』をギルドに渡した金の中から支払われるので、全額成公報酬。(補足:1,000gpは、現在の1,000万円。9レベルの騎士の1ヶ月給料と同額。3レベルだと護衛の場合、1ヶ月100gp位が妥当金額)
 メンバーの募集条件は、ギルドが身元を保証できる、自分よりレベルの低い者。上限は6人で全職業にわたっていること。初めて仲間になるもの。
「特に最後の1項目は、『マクレガー』なりの身の危険を減らす為の努力であろう。たとえ自分よりレベルが低くても、連携のとれたパーティに不意を討たれては危ないと考えたのであろう。まあ私の選んだ君達に限ってそういうことはないと信じているがね。それと、もし、不幸にも仕事を達成することが出来なかった場合、一番大切にしてもらいたいのは、君達自身だ。自分の信念に基づいて行動してくれたたまえ。健闘を祈る。」

 こうして、6人の即席冒険者パーティは、2週間分の食糧をもらって、セロ村に旅立った。
 道中、いくつかの危険を回避しながら、1週間後の夕方、予定通りセロ村に着いた。
 ここから、今回の冒険は始まる…

 こうしてあなた達6人は、新たなるメンバーとして冒険に出た。
  メンバーは、

 僧侶のサラ。
 戦士のリエンナ。黒マントが特徴的な10代後半の少女。
 戦士のラグナー。
 魔術師のルギア。
 シーフのハリー。黒髪に眼鏡装備の20歳代前半の青年。
 シーフのコリー。20歳代前半の男性。

 セロ村まで9日間、あなた達は力を合わせ、いくつかの困難を乗り越え、傷つきながらもセロ村の直前についた。

tealdice [shortland 『夢見石』第1回] tealdice あらすじ tealdice

1.「森の女神」亭

 マクレガーの依頼を受けた一行は、傷つきながらもセロ村に到着した。
 入村税を払って入ってすぐ、目抜き通りに「森の女神」亭という宿屋の看板が見えた。
 一同は宿屋へ入った。「森の女神」亭は賑わっていた。宿の主人であるガイーソン=クルーズ、その息子で宿屋手伝いのガギーソン、通いのウェイトレスのジールとブレンダ、二人組の中年親父と、駆け出しの冒険者一行、そして依頼人のマクレガーは食堂の大きなテーブルに座り、駆け出しの冒険者たちに酒を振る舞っていた。彼は、遠目に見てもわかるくらい目立つハート形の石を胸にさげていた。
 その石こそ『夢見石』だった。石は見る者の嗜好によってその色を変えた。
 一同はマクレガーに声をかけ、夕食をごちそうになった。出発は明日ということになり、一応見張りを部屋に置きたいというと、かえって邪魔になるから、と、断られた。さらに「石を見せびらかさない方がいいのではないか」という忠告にも耳を貸さず、マクレガーは一人で3階の寝室へあがっていった。
 サラは、あとから入ってきた高レベルらしい冒険者一行の中に神官がいるのを見つけて挨拶に行き、セロ村の教会の情報を得た。彼らのリーダーはグレイという戦士で、他に妖艶な女魔術師と、色男のシーフがいた。シーフは色の道に慣れているらしく、サラのことを一発で女と判断してみせた。
 ハリーは、これもあとから「森の女神」亭に酒を飲みに現れた、どことなく他の人間と違う雰囲気の男が気になって、彼のあとを尾けた。彼が入っていった家を確認していると、いきなり彼と同類らしいひとびとが現れ、「あまりここらへんに近寄らない方がいい」と釘を刺された。あとから知ったところによれば、その当たりは獣人区で、ハリーがドラゴンかと思った怪しい男はヘルモークというのだった。
 夜、見張りを立てるなとは言われたものの、あれだけ見せびらかしているところを見せられては気になってならず、パーティの数名が表で交替で見張ることにした。ただ、半刻ほどの間隙ができてしまった。

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2.第一の殺人

 ほとんど徹夜で表で見張っていたにも拘わらず、マクレガーは殺されていた。窓や扉には内側から鍵がかかり、完全な密室の状態だった。
 さらに重要なことに、彼のベルトポーチから夢見石が取り去られた形跡があった。何にせよ、「石」を持ち帰らないことには冒険者ギルドから受けた任務を果たせない。
 セロ村の教会の司祭ラルーサの来臨を得て、遺体を検分してから教会の安置所へ移動させた。マクレガーは腹部を鋭い刃物で三カ所刺されており、いずれも、どれが致命傷と言われてもおかしくないような傷痕だった。まるで「憎悪」を思わせるような深い刺し傷…。
 一同は、任務の半分を遂行するために(半分はマクレガー死亡により遂行不可能)、マクレガー殺しの犯人探しと「石」の探索とを行うことになった。まず、下の階に投宿していたグレイのパーティに、リッキィが情報を聞きに行った。色男シーフにたずねたところ、色男はリッキィの顔を見て「あっちの顔のいい女性を寄越せ」と言ったものの、一応次のことを教えてくれた。
 昨晩、マクレガーの部屋には少なくとも3人の来訪者があった。そのうち、最初の客はおそらくアグニで(駆け出し冒険者一行のリーダー)、マクレガーが部屋にあがってすぐに訪れており、何やら言い争っていたらしい。そのアグニたちはと言えば、今朝早く村を出立していた。
 リッキィは続けてヘルモーク(ハリーのいう「仮称ドラゴン」)の住処を訪ねた。彼が、冒険者たちを遺跡に案内する案内人だと知ったからである。ヘルモークにアグニたちの行方を尋ねると、8割方、アリスト丘陵だろうという話だった(残り2割は森)。
 一同は他にも部屋の中を探したり、宿の人間に話を聞いたりしたが、さしたる手がかりは得られなかった。そのまま、もう一晩を「森の女神」亭で過ごした。

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3.第二の殺人

 翌朝はジールの悲鳴で始まった。
 今度は1階の私室で、宿の主人ガイーソンが殺されていた。腹部に一カ所、鋭い刃物による刺し傷があり、油断していたか顔見知りの犯行と推察された。部屋の中は何もかもやりかけの状態で、帳簿はつけかけ、ランプは一晩ついていたのだろう、油が切れており、ベッドは使ったあとがなかった。
 魔術師のルギアはなぜか帳簿を読むことができ、「二重帳簿になっている」と看破した。が、ウラ帳簿に相当するモノは部屋の中には見あたらなかった。
 とりあえず、その場に居合わせた人間に話を聞くことになった。ブレンダ、ガギーソン、ジール、トム親父の順で、別々の人間が担当して事情聴取を行った。どうやらブレンダがガイーソンの部屋のドアを開け、驚いてモノを落としたその音でガギーソンが部屋に入ってきて、さらにそのすぐあとにジールが入ってきて悲鳴を上げ、気絶した、という順番らしかった。

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4.ジール

 サラはジールの事情聴取を担当したが、様子がどうもおかしい。話を聞くと、実はガイーソンを殺す夢を見たという。また、ブレンダのことに触れたときに、彼女の目に妬みの色が浮かぶのを見た。ブレンダの婚約相手のスピットに想いを抱いているという風ではなく、純粋に「幸福な人間」に対する嫉妬のようだった。
 どうにも気になるので、サラはジールを家まで送っていった。彼女の家は貧しく、母親は病気でほとんど寝たきりのようだった。母親に聖句による簡単な祝福を与えたあと、マクレガーと本当に会っていないか確かめると、実はあの夜も会ったという。ジールは、母親の薬代を稼ぐために売春をしていた。売春の元締めはガイーソン。マクレガーには何度か呼ばれ、あの夜も部屋へ行ったがまだ生きていたという。彼女は二人に対する殺人の動機(怨恨と憎悪)を持っているわけだった。
 サラは最後に「あの石を見かけたら教えて」と言って立ち去ろうとした、そのとき、明らかにジールが動揺したのに気付いた。彼女の目線が向かうところに小箱がある。「やめて!」と叫ぶのにも耳を貸さず、箱を開けたところ、中には「石」が入っていた。
 ジールの話によれば、その「石」は知らないうちに彼女の手元にあったのだという。どうしてよいかわからず、恐ろしくてだれにも話せずにしまっておいたらしかった。サラはジールに「あなたを信じる」と言って「石」を預かり、彼女の家を去った。
 宿へ戻る前に、キャスリーン婆さんの店でジールの母親用にクスリを買い求めた。それは痛み止めで、1服5gpもする高価なものだった。この薬代のために、ジールは嫌々ながら売春を続けていたのだ。ブレンダが手に入れらたような「普通の幸せ」に、彼女の手が届くことはなかった。

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5.招かれざる客

 サラが薬局に寄っているちょうどその頃、宿屋には招かれざる客が現れていた。
 ハリーの兄、レビー=メイソンがハイパーゾンビとなってやってきたのだ。周りで様子をうかがっていると、レビーは「森の女神」亭の別館へ向かい、大部屋で何かを探すように振る舞ったあと、墓地へ向かった。
 パーティが全員揃ったところで、一同は墓地へ向かった。レビーはマクレガーの遺体が安置されている廟に入っていった。様子を見について入ったハリーの目に、マクレガーの遺体にはめられた指輪が、怪しく輝くのが見えた。そして次の瞬間、マクレガーもアンデッドとなって起きあがってきた。
 一同はレビーとマクレガー、2体のアンデッドを相手に戦った。ラグナーやコリーが早々に麻痺してしまったりして、戦況ははかばかしくなかったが、最後にリッキィがなんとか攻撃をかわしながらハンドアックスを相手にたたき込み、アンデッドらは地に崩れた。

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6.夢の具現

 一同はレビーがハリーの兄であったことを聞かされた。ハリーの許可を得て、レビーの死体が所有していた荷物をあらためたところ、夢見石の迷宮についての地図とコメント、それから夢見石について書かれた本とが見つかった。
 どうやらマクレガーの「指輪」も、「石」がらみの特殊なアイテムのようだった。「石」はサーランド時代に魔術師が作った強力なマジックアイテムだが、あまりの強力さに暴走してしまった。ひとの夢を具現化してしまうというのがそれだ。その暴走を抑えるために、負の道具として「指輪」を作ったらしい。この「指輪」はそれ自体では非常にイヴィルなものだということだった。
 一同はまだ何か起きそうな気配を感じ、サラはジールの家へ泊まり込み、他のメンバーはブレンダとスピットをそれぞれ護衛することにした。
 夜半、ブレンダの家の前に、ジールが現れた。いや、それはジール本人ではなかった。ジールの姿をしたドッペルゲンガーだった。だがドッペルゲンガーが抱く妬みは、ジール本人のものだった。リッキィとコリーはドッペルゲンガーを攻撃して倒し、ブレンダの命を守った。ちょうどその同じ刻限、サラは隣に眠るジールが、ずっとうなされるようにしていたのから解放されたのを見た。
 こうしてセロ村における『夢見石』の殺人事件には、幕が下りたのだった。

tealdice [shortland 『夢見石』第1回] tealdice サラの第一の手紙 tealdice

 神の御旨により忠実なる僕となった神官サラから、パシエンス修道院の皆様へ。
 わたしたちの母なる神エオリスより、恵みと平安が皆様の上にありますように。

 院長様、兄弟たち、過日、まとまった金額をお送りすることをお約束いたしましたが、私にはこの約束を果たせそうにありません。
 依頼人は弑され、また別な人間も一人、殺されました。全くの無実ではなかったかもしれませんが、あのように無残に殺さるべき悪人とも思えませんでした。これも皆、依頼人が手に入れた「石」のせいです。

 この「石」をフィルシムの冒険者ギルドへ持ち帰れば任務は完了し、お約束どおり大金をお送りすることができるでしょう。それは決して少なくなく、修道院の兄弟たちを喜ばせることでしょう。院長様、そして兄弟たち、あなたがたの喜びは私のもっとも望むところです。さりながら、私はどうしてもこの「石」をギルドの手にゆだねたくないのです。

 「石」は強力な魔力を秘めています。詳しくは申し上げられませんが、この魔力のせいで無実の人間がひとり、その意志も無いのに殺人の加害者にされてしまいました。
 どうやらこの「石」はひとの夢を具現化するらしいのです。「理想」のような意味合いでの夢だけならば、問題ないのかもしれません。しかし、誰かを憎いと思ったとき、憎しみのあまり見てしまった夢まで、現実のものとなるらしいのです。

 ひとはさまざまな夢を見ます。楽しい夢もあれば恐ろしいような夢もあります。夢の中では酷いことを言ったり振舞ったりします。私とて、地に額をつけて神に許しを請わねばならないような夢を見たことがないとは申しません。でもそれらは皆、夢でしかないのです。仮令、夢の中で憎い相手を刺し殺したとしても(神よ、赦したまえ)罪にはなりません。目覚めたときに自らを反省し、意志の力で憎い相手への殺意を抑えられれば、そのひとには何も罪はない、むしろ、誉めらるべきなのではありませんか。その夢によって立ち返ることにこそ、夢の夢たる意味があるのではないでしょうか。

 ですが、その「石」は、力もて、ひとの夢を実現してしまうのです。貧困に苦しみながら一所懸命に生きている神の善良な子羊が、たまたま垣間見た夢によって、一夜で、害あるものへと変えられてしまうのです。
 私は神の僕として、この忌まわしい「石」を見過ごすことができません。何とか仲間を説得して、ギルドへは持ち帰らずに再度封印を試みるつもりです。

 仲間は冒険者としての矜持のある、その意味でのよき冒険者ばかりです。それゆえ逆に説得には応じてくれないかもしれません。ですが、最後まで諦めず、全力を尽くすつもりです。

 院長様、兄弟たち、あなたがたの力となることのできないこの弱い私をどうぞお赦しください。
 願わくば私の振る舞いが神の御心に添うものでありますように。
 皆様方に心からの愛と祝福をおくります。

セロ村にて   サラ

tealdice [shortland 『夢見石』第1回] tealdice プレイヤーのコメント tealdice

 初めてのメンバーと初顔合わせでいきなりシティアドベンチャー(笑)。私、情報収集が下手なもので、なかなかお役に立てませんでした。その代わり、マクレガー殺人事件の捜査の時にはプレイヤーとして、「『オリエント急行』ばりに全員が犯人だったんじゃないか?」などと与太話を提供するのに貢献しておりました(捜査の惑乱に貢献してどーする……)。

 ジールの件は、たまたま向こうがダイスで20を出して失敗したからわかりましたが、そうでなければもっと捜査が難航していたかも……(汗)。とりあえず、ジールとのふれあいを通して神官らしいロールができたので、楽しかったです。

 ただ長かった……終わったの22時だもん(笑)。

 それにしてもマスター、どうして毎回(まだ二度目ですが)「できそこないの理想郷」だの「いらんこと(夢)まで実現してくれる石」だの、そーゆー系統のものばっかり出すんですか…。「またかいっ」って思ったって言っていいですか?(笑)


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