声が、聞こえる。…ああ、また夢か、もううんざりだなぁ、頭の中のこの声…等とまどろみの中で、《あなた》は考えた。
「本当によろしいのですか。彼女は、記憶すら失っているのですよ。自分が何のために世界に降りたのか、判ってもいないのに、そんな重要な任務を背負わせて。」
「記憶がないからこそ、公正に判断できるのではないかな。人間だ、獣人だと色眼鏡で見ることなく、正しき道を選んでくれるのではないのではなかろうか。」
「しかし、あまりにもむごすぎます。彼女の肩に全ての獣人の…いや、この世界全ての生物の未来をかけるのは。」
「彼女が、世界の中で、何を見、何を感じ、何を為すか。それが重要なんじゃよ。結果が全てではない。たとえそれが最悪の結果になったとしても、それすらも神は大いなる高みで、御覧になっているのであろう。我々は神の『見る目』となって、世界の全てを見届ける義務があるのじゃ。」
「それでは、あんまりです。」
「主の言いたいことは、判る。しかし、全ては神の御心じゃて。『審判』さえもな。」
心地よい声。どっかで聞いたことのある、懐かしい響き。しかし、全てはまどろみの中へと消えていった。
仲間の死。それが『審判』にどういう関わりをもたらすか。それすらも『見られて』いるのかも知れない。
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