それは内側からやってきた。いつものように外からではなく。
轟という風の音が胸の中でマットな響きを鳴らす。
吹き抜けて行かずに音を鳴らし続ける。
突き上げる悲しみ。何の前触れもなく飛来して。
いつもの、肌を刺すようなものとは違う。
チリチリと身を灼くようなものとも違う。
曇った熱を帯びて、胃の腑が焼き出されるような鈍い痛みとともに、
地の底に沈んでゆきそうな重みを感じたまま------
胸が鳴るのはそこが空っぽだから。
両手で顔を覆う。
こんなのはおかしい。なぜ泣くの。
サラ、ああ、貴女は涙を止めるなと、
それは天与のものだから隠すなと言ってくれたけれど、
でも本当に?
だってこれは違う。
こんなのは違う。
私は自分の無力が悲しい。
頬を伝うのは浅ましの涙。流す甲斐もなく。
このまま涙で自分が溶けてしまえばいい。
融けて、大気になってしまえばいい。
そうすれば思い患うことなく見守ってゆける。
ひとりは見殺しにし、ひとりは手を差しのべもせず、
今ひとりはその生々しい傷を押しひろげるばかり。
せめてこの顔がなければよかったのに。
いいえ、手も目も声も、こんなに無力ならば何のために在るのか。
いいえ、いいえ、私は何もないに等しい。
そして訪れる空白。
それがどうしようもなく悲しくて。
浅ましの嘆きや。
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