主なる神よ、懺悔いたします。
私の心は猜疑に満ち、とても神職を務める者の在りようとは申せません。
もうずいぶん前のことになりますが、セロ村から最初にフィルシムに帰る前の1月25日の晩、私は祈りを捧げるために神殿に行きました。その帰り、思いついたことがあって宿の裏手から帰ったのですが、そのときに見てしまったのです。
宿の裏手には背の高い男の人が立っており、胸元から梟をとり出だしてそれを夜空に放ったのでした。私はぼんやりと梟が街道の方へ飛び去るのを眺めていました。すると男の人が振り向いて、「見られたか」と言いました。ジャロスさんでした。
ジャロスさんは、「今見たことは君の仲間にも俺の仲間にも言わないでくれ」と私に頼んできました。私はそのとき何を考えていたのでしょう、自分でも靄がかかったように思い出せないのですが、とにかく肯いてしまいました。彼は「素直な女の子は好きだよ」といった意味合いのことを言って、私の頭を軽くはたきました。
話がスコルさんのことに移って、さらにそのあとで私は部屋に帰りましたが、その直前にも、だれにも言わないよう釘を刺されました。
主よ、私はジャロスさんに対する猜疑を消すことができません。本当のことを言えば、つい先日まで、再びセロ村に戻って彼の顔を見るまで、このことは忘れていました。けれども思い出して以来、彼に対する疑いを心から払うことができません。この醜い心から。ジャロスさんは私に対して何ひとつ悪を働いていないというのに。
そのうえ、主よ、私は早晩、このことをだれかに語ってしまうでしょう。
だれにも言わないと約束しておきながら。
私は岩だったらよかった。何事を見ても動じず、恐れず、心を揺らさず翻さないでいられるような、岩であればよかったのです。
けれどももはや秘密の重みに胸の内を隠しておくこと能わず、私は契約を破ることでしょう。
罪の上に罪を重ねる私を、主よ、どうかお赦しください。
お赦しくださらずば、どうかお怒りを我が頭上に顕し給え。
お赦しにてもお怒りにても、あなたの御言葉は不安に恐れおののく私の胸を再び力づけてくださいましょう。どうかただ一条の勇気を我が身に得させ給え。
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